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ヘルパー2号の悲劇 [創作]

ある日の朝・・・

「リュータ、いい子にしてて。今日はなるべく早く帰ってくるから」

「ママ、今日は日曜日だよ。お休みなんじゃないの?」

「ゴメン、しばらく忙しいの。2号がいるから大丈夫でしょ?」

そう言うとママは人型お手伝いロボット「ヘルパー2号」を起動させた。


「おはようございます、リュータくん。今日も一緒に楽しくお勉強しましょう」

「楽しくなんかない!」


「仕方ないでしょ。中学受験が終わったら、遊園地に連れて行ってあげるから、
それまでいい子でお勉強してて。わかった?
ごめん、急いでいるから。行ってきます!」

ママは振り向きもせずに出かけてしまった。
いつも、こうだ。
そしてヤツはこう言う。。

「リュータくん、お勉強しますか?」

「しない!」

「リュータくん、一緒に遊びますか?」

「遊ばない!」

「リュータくんはお勉強をしてください。ワタシはお掃除します」

2号の足は変形して掃除機になった。
手で散らかっているものを片づけながら、足が埃を吸い込む。

2号が来てから、ママが掃除をするのを見たことがない。
こんなに手際よくきれいになるんだから、ママも自分でやる気なんてなくなるんだろう。

「リュータくん、塾の宿題の答え合わせします。ノート見せてください」

リュータくん、リュータくん、毎日毎日、一日中、名前を呼ばれて、もうウンザリだ。
ママはどういう設定をしたんだろう。

ボクは2号にノートを渡すと、この間こっそり見つけ出した2号のマニュアルを読み始めた。
2号を壊せばママはうちにいてくれるに違いない。
以前のように、掃除したり、料理を作ったり。。。きっとボクと一緒にいてくれるだろう。

「リュータくん、何を見てますか?」

「何でもない!」

ボクはマニュアルを隠した。
2号は気にせず(ロボットなんだから気になるとかいうこともないんだろう)、宿題の解説を始めた。

ボクは聞いているフリをしながら、2号を壊す方法を考えた。
耳の後ろに一番重要なパーツが埋め込まれているらしい。
むずかしい用語の意味はわからなかったけれど、壊れさえすれば十分だ。

「リュータくん、昼食を作る間、宿題を直してください」

「ボクはゲームする」

「それならワタシも後で通信で参加します」

「オマエとはしない!」

2号は返事をせず、料理を始めた。
2号の料理は確かに美味しい。
朝ごはんはママが用意したけど、作ったというより、買ってきたパンを並べただけだった。
2号は嫌いな食材でも、ボクの好みに合わせて、食べたくなるような料理を作る。

でも、でも、ボクはヤツを壊す。
だって・・・

「リュータくん、お昼にしましょう」

2号はロボットだから、食事をしない。
ボクが食べるのをずっと見ているだけ。
美味しそうに食べても、まずそうに食べても、何も言わずに、ただ見てるだけ。

「リュータくん、食器を片づけ終わったら、一緒にゲームします」

2号にゲームで勝っても、ちっとも嬉しくない。
ロボットなんだから、本気を出せば強いに決まっているのに、ボクに負けるなんて、
何だか馬鹿にされているみたいだ。

ゲームを少しだけしてから、ボクはずっとテレビを見ていた。
その間、2号はボクを見ている。

「リュータくん、受験勉強しましょう」

「リュータくん、少し勉強しましょう」

「リュータくん・・・」


何度も言うな!

ママはいつ帰ってくるんだろう?
早く2号を止めてくれ。
そうでないと、そうでないと。。。


ボクはパパのゴルフバッグを出していた。
気がつくと、クラブを握りしめて思いきり2号の頭に叩きつけていた。
何度も、何度も。
無我夢中だった。




「安全装置解除」  そんな声が聞こえたような気がした。

そして、ママの声が聞こえたような気がする。
「ただいま!」





「侵入者発見。リュータくんを危険から守ります」





ボクはママが2号の両腕にしっかりと捕まれたまま
息絶えるのを見た。

廃棄焼却へ

IMG_1096.jpg  我が家の受験生は大丈夫だろうか?
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再び金魚姫 [創作]

化学なんか全然好きじゃないけれど、
最近、頑張ることにしたの。
ゲンちゃんは去年の担任。
この頃、よくうちに遊びに来てくれる。
去年から憧れていたけれど、
まさか、うちに来て一緒にご飯食べたり、ゲームしたりできるなんて夢のよう。
なんだか家族が増えたみたい。
私、ゲンちゃんのお嫁さんになろうかな。
でも、先生だから、
私が高校卒業するまで、そんなこと言わないよ。
先生も待っててくれるのかな。

ゲンちゃんは化学の先生だから、私も勉強して先生になろうかな。
一緒に先生したいよ。
ゲンちゃんは化学、じゃあ私は国語にする?
一緒の学校だったらいいな。
うーんと頑張るから、ゲンちゃんも協力してね。


あっ、ママが呼んでる。


「潤子、あのね、玄田先生との結婚式夏休みで考えているの。
新婚旅行の間、一人になるけど、あなた大丈夫?」







「ママの馬鹿!」

潤子はうちから飛び出した。

うすうす気がついてはいた。
信じたくなかったから、考えないようにしていた。

だって、ママより私の方が可愛い
ママより私の方が先に、ゲンちゃんのことを好きだった!
ママみたいに、ほうれい線もない。
ママみたいに、セルライトもない。
ママみたいに・・・

私の方が絶対に魅力的だ!

ママなんか大嫌い!


泣きながらうろついているうちに、一件のペットショップに辿りついていた。

可愛い子犬!
可愛い子猫!

若い方がいいに決まっている。
ゲンちゃんの馬鹿!

カラフルな熱帯魚!
ゴージャスな大きい金魚!

華やかな方がいいに決まっている。
ゲンちゃんの馬鹿!

そして、地味な金魚!
つまんない金魚だわ!

潤子はつぶやいた。
「いいわよね、金魚は水槽の中で呑気に泳いでいるだけ!」


「そんなことないわよ。
金魚だっていろいろ大変なんだから」

金魚がしゃべった?
潤子は驚いて聞き返した。

「あなたがしゃべったの?」

「そうよ、悪い?
人間こそ馬鹿みたいに贅沢ばっかり言って、偉そうに。
人間の子どもなんて、大きな体のくせに一人じゃ何にもできないのね」

「金魚なんかに言われたくないわ。
人の気持ちもわからないくせに」

「わかってもらおうなんて甘いわね。
あなたなんかに金魚が呑気だなんて語る資格ないわ。
・・・
目一杯素敵に見えるように泳ぐことってできる?」

「そんなことしか考えてないなんて、馬鹿みたい」

「じゃ、できる?」

「何で私にできるのよ。人間なのに」

「やってみないとわからないわよ。
入れ替わってみましょうよ、ほら!」



潤子は金魚になって水槽で泳いでいた。



自由を手に入れた金魚は、振り向きもせず店から出ていき、
二度と戻っては来なかった。








夏休みを迎え、玄田は寂しい思いをしていた。
今頃、新婚旅行に行っているはずだったのに。

結婚が決まった途端、
婚約者の娘が、「私は金魚なの」なんておかしなことを言いだした。

婚約者は、娘の異常は親の結婚話が原因だと考えた。
話し合った結果、婚約破棄。

元担任と母親の結婚なんて、相当ショックだったのだろうか。
娘とはうまくいっているつもりだった。
でも、無理していたのだろうか。
我慢し過ぎて精神的限界を超えたのかもしれない。

寂しさを紛らわすため、ペットショップに行ってみた。
また、一人ぼっちで生きていかなければならない。
せめて、熱帯魚でも飼ってみようか。

カラフルな熱帯魚!
ゴージャスな大きい金魚!

今の気分には合わない。


そして地味な金魚!

俺と一緒だな。


玄田は地味な金魚1匹と、水槽を一つ買って帰った。

THE END

金魚姫に戻る
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キス [創作]

鱚が読めなかったから(・・;)




今日も、道彦は憧れの潤子ちゃんを一目見ようと、女子高の校門のそばで待っていた。
いつまで待っても潤子ちゃんは出てこない。
もうとっくに授業は終わっているはずなのに。


「あっ」と気がついた。

そう言えば、潤子ちゃんは花粉症
たくさんの女子高生がマスク姿で学校から出てきたけれど、
迂闊にも道彦はその中に彼女がいたことに気づかなかった。

次の日、同じように待っていたら、マスク集団に彼女を発見。
顔をぴったりマスクで覆っているけれど、間違いないよ。

「潤子ちゃん」
道彦は妄想にとりつかれた。

もし、僕があのマスクだったら、潤子ちゃんに密着できるのに。

「あのマスクになりたい!
本当になりたい!
絶対なりたい!」

念じすぎて気を失いそうになった。
ハッと我に返ると、道彦は潤子ちゃんとキスしていた。
「そんな、大胆な!俺ってバカだ」
そう思ったけれど、潤子ちゃんは全く怒っていない。

道彦は願ったとおり、マスクになって彼女の口を覆っていた。

今まで、遠くからそっと見つめていただけだったのに
いきなり、距離が縮まり、
彼女の吐く息を感じながら、
道彦は陶酔していた。





その日、潤子はまっすぐ帰宅すると、
すぐにマスクを外して
ごみ箱に捨てた。


THE END

再び金魚姫へ
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金魚姫 [創作]

ここに来てから、私には楽しみができた。
だって、ガラス越しにステキな彼の様子を覗くことができるんですもの。。。ストーカー?そんなんじゃないわ。

昨日も今日も、一日2回も3回も、彼と目が合って、そして、そしてね、
ずっと見つめあっていたの。

じれったいわね。
やめとけって?
そうかもしれない。でもね、触れてみたいの、あの人に!
死んでもいいから。。。

今日こそ勇気を振り絞ってみる。
超えてはいけない一線があるって?
そんなこと構うものですか。。。







ピチャッ・・・

道彦は飼っている金魚が水槽から飛び出してきたので驚いた。
慌てて、水槽に戻したけれど、
しばらくしてから見に行くと
金魚は水面に頼りなく浮かんでいた。

THE END

キスへ
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クビ-最終回 [創作]

今までの話

-キョーコの憂鬱-


月日が過ぎた。


キョーコは、箱を埋めた場所に魔よけのため小さな柊を植えた。


姉のショーコは、好きでもない男と結婚して、さっさとこの家から出て行った。

キョーコは、キョーコは時々庭から男の声がするような気がすることにも慣れてきた。


「Xの命日だね」

すべての人に忘れられても、キョーコは大嫌いな”Xの墓”を守り続けていた。


一度だけ警察がXのことで会社に来たが、特にキョーコに何か聴くわけでもなかった。
Xが亡くなった、または失踪したことについての聞き込みなのだろうが、
それが殺人事件なのか、バラバラ死体なのか、単なる駆け落ちなのか
部下だったキョーコたちには何の情報もなかった。


Xの6番目の妻のケイコが手続きのために会社にやってきた。
全く悲しそうではなく、むしろせいせいしたという表情だ。
きっと退職金をもらえたのだろう。
キョーコは、妻がXのことを持て余していたに違いないと思った。


キョーコは会社を辞めようと思った。
辞めて何をしようというあてもないけれど、
もう、いろんなストレスでいっぱいいっぱいだった。

その日の仕事を終えた後、上司に辞表を渡した。

特に理由もないんだったら考え直すように言われた。
疲れたのなら、しばらく休んでもいいとも言われた。

その場は、2、3日休んで考えますと答えて、うちに帰った。


家に着くまで我慢していたけれど、玄関に入った途端、涙が止まらなくなり、
声を出して泣いた。

声がかれるまで泣いた。




ピンポン
チャイムが鳴った。

今は出たくない。
人に会える顔をしていない。


ピンポン、ピンポン

しつこくチャイムが鳴る。



仕方なくドアを開けた。
涙をぬぐって、顔をふいてから・・・


「・・・」



そこにはXが立っていた。



「俺のせいで、ゴメンな、キョーコ」


THE END
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クビ-5 [創作]

今までの話
クビ1
クビ2
クビ3
クビ4



-甘い逃避行-

人騒がせなXは、セシリアという女性と二人でのんびり温泉めぐりをしていた。
この旅行を最後に日本を離れ、二人でセシリアの母国に移住する計画になっている。

風光明媚なリアス式海岸、青い海がきらきら輝く。
Xは海をバックにセシリアにポーズをとらせ、写真を撮りまくっていた。



「宝くじが当たっても、ケイコにバレないかドキドキしてたんだぜ。
アイツ、金のことしか頭にないからな。
実際に現金が手に入るまで、生きた心地がしなかったよ。
バレたら、マジ殺されてたかもな。
でもさ、君と出会えたことが一番、人生の当たりくじだよ、ハニー

「それにしても景気よく、いろんなところにばらまいたみたいね」

「妻たちにはずいぶん迷惑かけたからな。
でも、ケイコには何にもなしだぜ。
きっと俺がいなくなったら、自力で何でもかんでも金に換えそうだからな。

キョーコ君にはメロンと100万円送っといた。
新入社員歓迎の飲み会の時に、メロンが好きだって言ってたからな。
アイツ、単純というか、天然というか、いじりがいがあったなあ。
ちょっとやりすぎたかもな。恨んでるだろうなぁ。
ま、最後にまたいたずらしたからね。
ひっかかったとしたら、俺の実家に100万円送っちゃってるかもな」

「悪い人ね。でも、キョーコって子のこと、ちょっと好きだったでしょ?」


・・・そうかもな。相手にされなかったけど、一番好きなタイプだったかもな。
でも、でも、いくらキョーコでもメロンの匂いがしたらわかるだろう。
いろいろ悪かったな。迷惑料、受け取ってくれたよな。・・・

Xは断崖に打ちつける白いしぶきを見下ろしながら、感慨深げにキョーコのことを思い出していたが、
考えを打ち消すように遠い海に視線を移し、そしてセシリアに向かって言った。

「セシリア、今、ホントにほっとしているよ。
ケイコには悪いけど、
こんな心に安らぎを感じたのって何年ぶりだろう。
お前と二人きり。世界は俺達二人のためにあるような気がする。
幸せってこういうことだなんだな。

海、きれいだな。でもこの景色ともさよならだ。
さよなら、日本」


セシリアもつぶやいた。


「さよなら」



一瞬の出来事だった。セシリアがXを思いきり突き飛ばし、Xは海に転落していった。


「女は欲張りなの。世界は独り占めしたい。一人で母国に帰ります。
ごめんなさい、おバカさん。いろいろとありがとうね。感謝しているわ」

つづく
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クビ-4 [創作]

今までの話
クビ-1
クビ-2
クビ-3

-御裾分け-

キョーコとショーコが大騒ぎしている頃、Xの最初の妻に荷物が届いた。

”あなたの希望に基づき、X氏の殺害を行いました。礼には及びません。
死体の処理は当方で行いましたが、右腕だけはご自分で管理をお願い致します。
つきましては、下記の住所にて安全かつ低料金での処分を請け負っておりますので、
ご参考いただければと存じます。
なお、振込用紙を同封いたしますので、ご利用の場合には振込によるお支払いをお願い致します。”

最初の妻は荷物を開けた。

同じ頃、Xの2番目の妻にも荷物が届いた。

”あなたの希望に基づき、X氏の殺害を行いました。礼には及びません。
死体の処理は当方で行いましたが、耳だけはご自分で管理をお願い致します。
つきましては、下記の住所にて安全かつ低料金での処分を請け負っておりますので、
ご参考いただければと存じます。
なお、振込用紙を同封いたしますので、ご利用の場合には振込によるお支払いをお願い致します。”

3番目の妻にも、4番目の妻にも荷物が届いた。


”あなたの希望に基づき、X氏の殺害を行いました。礼には及びません。
死体の処理は当方で行いましたが、目だけはご自分で管理をお願い致します。
つきましては、下記の住所にて安全かつ低料金での処分を請け負っておりますので、
ご参考いただければと存じます。
なお、振込用紙を同封いたしますので、ご利用の場合には振込によるお支払いをお願い致します。”

5番目の妻が箱を開けた。
ジュエリー、その価値がいくらぐらいのものかはわからないけれど、
箱の中は輝きで満ちていた。

「大したものね。相変わらずのいたずらだわ。
何が死体よ」

5番目の妻はうれしそうにジュエリーを眺めていた。



-そして6番目の妻-

数日後のある日、キョーコが出勤すると、総務部の方で喚き声が聞こえた。

「何で、あの人は私が妻だと届けていないの?」

「ご本人から奥様がいらっしゃるという届が出ていない以上、
証明に必要な書類を揃えていただくことになります。
でも、まだ亡くなったと決まったわけではありませんし、
奇抜な方でしたから、ひょこっと出てくるかもしれないじゃないですか。
失礼ですが、ご本人の意思で無断欠勤がこれだけ長く続くということでしたら、
懲戒解雇ですから、退職金の対象にはなりません。
ご心配だとは思いますが、連絡を取り合うということで、
今日のところはお引き取りいただけませんか」

「退職金はいくらになるの?長く勤めていたんだから、1000万円はあるわよね?」

「今の段階でそのようなことは・・・」

Xの6番目の妻は引き下がらなかった。
キョーコはじっと聞いていたが、始業時間に間に合わなくなりそうだったので、
慌てて自分の席に向かった。

つづく
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クビ-3 [創作]

クビ-1
クビ-2


-埋める-

翌朝、腹ぺこの二人は喫茶店でモーニングセットを食べた。

コーヒーを飲みながら、ショーコが言った。

「X課長が会社に来ていても、来てなくても、必ず電話ちょうだいね
普通に来てると思うけど、もしかしてってこともあるし、
私だって、早く安心したいんだから」

「来てて、アイツにつかまったら電話できないかもしれないけど」

「だめだめ、早く電話ちょうだい」

「わかった」

コーヒーを飲み終えると、ショーコは慌てて店を出て、ビルの谷間へと消えていった。
キョーコも後を追うように、店を出た。

キョーコの会社はこのすぐ近くだ。

いつものように更衣室のロッカーに私物を置くと、自分の席に向かった。

パーティションで区切った、10数名の部署がキョーコの所属するセクションだ。
そして、窓際を背にした管理職の席がX課長の席だが、
いつも朝早く出社するXはまだ来ていなかった。

キョーコは不安でいっぱいになった。

次々と、課員が出社してくる。
しかし、Xの席は空席のままだ。

奥から部長がやってきた。

「Xはまだか」

「は、はい」
キョーコが返事した。

「朝ミーティングのはずだったんだが。
何の連絡もないとはXらしくない。
携帯に連絡して、つながるようだったら俺につないでくれ」

「はい」
返事しながら、キョーコは血の気が引く思いだった。

課員の名簿からXの携帯番号を調べて電話してみたが、
20回コールしても誰も出なかった。
もう一度かけてみた。でも同じことだ。
そのことを部長に伝えた後、、キョーコはこっそり席を抜けだしてショーコに電話した。


「マジ?本当に来てないの?」

「お姉ちゃん、どうしよう」

「何事もないふりして、時間まで仕事してなさい。
まだ、あれが死体と決まったわけではないんだから」

「でも」

「だって、何か事情があって今は連絡できないけど、午後から来るかもしれないでしょ。
あなたが今じたばたしたって、どうしようもないじゃない」

「わかった」

「じゃあ、電話切るよ」

「うん、じゃあ後でね」

時間まで仕事をしろと言われても、仕事になるはずもなく、
時計はゆっくりとしか進まなかった。


昼休み、キョーコは食堂でみんなと離れてぼんやりテレビを見ていた。

昼のニュースの時間だった。

「○○山中で男性の左手首が発見されました。。。」

キョーコはギョッとした。
あわてて、人のいないところに行き、またショーコに電話した。

「そんな事件は最近よくあることでしょ」

「タイムリーすぎない?」

「こんな話、あなたの会社で誰かに聞こえるとまずくない?」

「そうかも」

「でしょ、帰ってからゆっくり話しましょ」

「わかった」

二人にとって午後の時間はとんでもなく長く感じられた。
心ここにあらず状態で、ただただ時間の経つのを待った。

Xはとうとう姿を現さなかった。
何の連絡もない。


終業時間が来ると、二人とも飛ぶように帰った。


冷蔵庫の前で二人で考え込む。
どうしよう・・・

沈黙を破るように、キョーコがぼそっと言った。
「10万円払って、手紙に書いてる住所に送ってみる?」

「そんなところに死体を送ったら、犯人に仕立て上げられるかもしれないわよ。
指紋とかいっぱい、ついちゃってるんだから」

沈黙!

「じゃあ、警察に言う?」

「警察はダメ。だって、バラバラ死体にするぐらいだもの。
今だって盗聴されてるかも。
警察に行くってわかったら、私たちの身だって危ないわよ。」

どうしよう・・・

今度はショーコが提案した。
声は出さず、身振りをつけて口の形だけでキョーコに伝えた。
「庭に埋める?」

二人は倉庫からスコップを探し出し、庭の地面を掘り始めた。
スコップで土を掘るって何年ぶりだろう。
親が生きていた頃、一緒に何かの苗を植えて以来かな。

50センチ四方ほど掘ってから、一度うちに入り、二人で冷蔵庫を開けて例の箱を取り出した。
ポリ袋でぐるぐるに包まれた箱をそのまま庭に持ち出し、穴の中に置いてから土をかけた。

X課長さようなら!

二人は手を合わせた。


「冷蔵庫!」
顔を見合せて同時に叫んだ。

「まだ、電気屋さん開いてるよね」
二人は新しい冷蔵庫を買いに走った。

つづく
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クビ-2 [創作]

昨夜の続きです。。。

-冷蔵庫-

きっと手の込んだ振り込め詐欺よ。
ショーコは自分を納得させようと必死になっていた。

真夜中。ショーコは寝苦しくて何度も何度も目を覚ます。

気にしない、気にしない、気にしない。だってメロンだもん。

気にしない、気にしない、気にしない、
トントン、トントン、トントン、ノックの音がする。

ショーコは固まった。

「誰?」

「おねえちゃん、起きてる?ちょっと来て」

「何だ、キョーコか。脅かさないでよ。どうしたの。
今、何時だと思っているの?」

ドアを開けてキョーコが部屋に入ってきた。

「ねえ、冷蔵庫が何かおかしいの」

「何かって?」
ショーコは再び固まった。

「何か言ってるの」

「冷蔵庫がしゃべるわけないでしょ。寝ぼけるんじゃないわよ」

「クビがしゃべってるのかも」

「メロンよ」

「一緒に来て」


こわごわ二人はキッチンに向かった。

何も聞こえない。
特に変わったことはない。

でも、
でも、冷蔵庫を開けたら、いきなりX課長が飛び出してくるかも・・・


「せえので開けるよ」

「せえの」

二人は息を止めた。

けれど、中には例の大きな化粧箱が入っているだけだった。
入れた時と同じ状態で。。。

唐突にキョーコが提案した。
「ねえ、ビニール袋で何重にもぐるぐる巻きにして、密封しよ」

「そうね」

「Xが出て来れないようにね」

「だから、メロンだって」

二人は箱をポリ袋に入れた。念いりに袋5枚を使用した。

これで、匂いが漏れることもない。
しっかり縛ったから、X課長が出てくることもない、か?

二人はぐったりして、朝までぐっすり眠った。

続く
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クビ・・・(あなたならどうする) [創作]

-差出人不明の荷物-

「ああ、むかつく」
キョーコは会社から帰ってくるなり冷蔵庫に直行し、缶ビールを一気に飲み干した。

「どうしたの、荒れてるわね」
姉のショーコがキョーコの顔を覗き込んだ。

「X課長よ。会社なんかもう辞めちゃおうかな」

「また、X課長の話?今度は何?セクハラ?彼、バツ5なんでしょ?」

「バツ5ってないよね。少なくとも物好きが5人もいたってことだよ。セクハラはないね、私、嫌われてるから。
アイツ、きっとそのうち刺し殺されるよ」

「物騒だわね。酔った勢いであなたがやっちゃったなんて、ヤダよ」

「あんな奴のせいで、殺人犯なんかになりたくありません」

ピンポーン、その時、チャイムが鳴った。
ショーコが出た。

「荷物、キョーコ宛てだよ。メロンかしら。クールで来てるよ。
あれ、差出人不明だ。受け取ってよかったのかしら?」

「何だろ」

大きな発泡スチロールの箱を開けると、その中にまた箱が入っていた。
中の箱の上に封筒が乗っかっている。
ショーコが勝手に封筒を開けて、中の手紙を読み始めた。

”あなたの希望に基づき、X氏の殺害を行いました。礼には及びません。
死体の処理は当方で行いましたが、首だけはご自分で管理をお願い致します。
つきましては、下記の住所にて安全かつ低料金での処分を請け負っておりますので、
ご参考いただければと存じます。
なお、振込用紙を同封いたしますので、ご利用の場合には振込によるお支払いをお願い致します。”

ショーコはキョーコに向き直って言った。
「10万円だって」

高っ!
つか、殺人頼んでない。つか、この荷物はXの死体のクビなの?
キョーコはパニックに陥ってしまった。

「誰かのいたずらでしょ?きっとメロンだよ。箱あけてご覧よ」
ショーコは極めて冷静だ。

「お姉ちゃん、開けてよ」

「自分で開ければいいじゃん」

「やだ」

「私もヤダよ。メロンは冷やした方がおいしいから、冷蔵庫に入れとこか?」

クビを冷蔵庫に?しかもX課長のクビ!
食べ物と一緒にXだよ。ないな!
キョーコの頭の中は大混乱状態だった。

「だから、メロンだってば」
ショーコはひきつりながら笑っていた。

ショーコだって疑っているんだ。
メロンじゃなくてクビだとしても、とりあえず冷やした方が良さそうだ。

二人で話し合った結果、
今日のところは、クビまたはメロンを冷蔵庫に入れ、
明日会社に行ってみて、
X課長が出社しているかどうかを確認してから箱を開けることにした。
二人が夕飯を諦めたのは言うまでもない。

さっさと警察に届ければ良かったのにね。。。

続く
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